第4回 学生論文コンテスト 選考結果

4回 学生論文コンテスト 選考結果

4回学生論文コンテストにつきまして、発表動画による1次審査、口頭発表による2次審査、論文の査読、そして視聴者による投票に基づき、受賞者を以下のように決定しました。

1.学部学生部門

【最優秀賞】

該当者なし

【優秀賞】

髙橋 茉優 氏(東京大学)

「経済格差の大小は再分配意思決定に影響するか」

2.修士学生部門

【最優秀賞】

該当者なし

【優秀賞】

該当者なし

3.聴衆賞

宮崎 聖人 氏(広島大学)

「データから物理法則を発見する人工知能:AI-Feynmanの成果と課題,及び行動科学への応用」

*所属は応募時のものです。

【総 評】

行動経済学の現状と将来の可能性を反映して、心理学や物理学等、幅広い分野から論文が寄せられ、審査員一同、興味深く拝見しました。

学部生部門8件、修士学生部門1件の応募があり、発表動画に基づく1次審査により学部学生部門5件、修士学生部門1件が2次審査に進みました。オンライン公開制の2次審査では、口頭発表および論文査読に基づく最優秀賞・優秀賞の審査、また視聴者の投票に基づく聴衆賞の決定が行われました。

1次審査を通過したどの論文も、学生の論文としては優れたものであるというのが審査員の一致した評価です。2次審査では、受賞論文が(学生論文と明記した上でですが)学会誌に掲載されることから、学術論文としての完成度やその研究の学会への貢献の程度からも審査されました。

総じて、どの論文も理論的分析が手薄である印象を受けました。経済学の研究では、実験や実証の研究であっても、その仮説形成や分析結果の解釈・評価においては、単なる思い付きで終わらないためにも、しかるべき理論的裏付けの基に行うべきものです。その点はぜひ今後の課題としていただきたいと思います。

修士学生部門では、残念ながら今回は該当者なしとなりました。

学部学生部門の優秀賞に選ばれた高橋論文については、給付金の配分方法という社会的に意義のある話題と関連するテーマである点と、比較的多くの実験参加者を用いて適切な実験計画の基に実験を行い、データ分析を行っている点が評価されました。ただし、リスク選好が結果に与える影響について行動経済学的分析が不足している点や、実験計画において社会的配分を第三者的視点で行わせている上に実験報酬が一律であるために、選択に十分なインセンティブが与えられていない点など、経済学研究の標準から見れば問題とされる点が指摘されました。

視聴者の投票の結果、聴衆賞に選ばれた宮崎論文は、時間割引関数の推定に際し、経済学の研究では目新しい、データから関数のパラメータではなく関数形を推定する記号回帰という手法を用いている点が評価されました。ただし、そのデータ取得手法には問題があり、また、記号回帰が威力を発揮する研究領域については再考の余地がある点などが審査員からは指摘されています。

惜しくも受賞を逃したその他の論文につきましても、それぞれ価値のある研究となるポテンシャルを有していると評価されています。審査員が作成した査読報告書を基に適切な改訂がなされれば、将来的に有望な研究になることが期待されます。引き続き行動経済学会等でその成果を拝見できる機会を、審査員一同楽しみにしています。

なお、受賞者の表彰は第15回行動経済学会大会(成城大学/12月)にて行われます。

第4回学生論文コンテスト審査委員

川越 敏司(審査委員長)

森 知晴(審査副委員長)

和泉 潔

犬飼  佳吾

佐々木 周作

高橋 秀徳

田口 聡志

室岡 健志

山村 英司